金融商品取引法施行令の一部改正(令和3年6月2日政令第162号〔第6条〕令和3年11月1日から施行)に伴い「勧誘方針」に法律名が記載されている場合などは、修正が必要となります。

2020年6月5日に成立した「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」により「金融商品の販売等に関する法律」が「金融サービスの提供に関する法律」(以下、「金融サービス提供法」といいます。)に改称され、本年11月1日に施行されます。

金融サービス提供法は、従前、銀行・証券・保険の各分野の規制法(銀行法・金融商品取引法・保険業法等)がそれぞれ規律していた多種多様な金融サービスの仲介業について、1つの登録を受けることによりすべての分野に係るサービスの仲介を行うことができる金融サービス仲介業」を新たに創設するものです。既存の仲介業者や新規参入をしようとする仲介業者のみならず、銀行、証券会社、保険会社等にも影響を及ぼすことが見込まれます。本年2月22日に金融サービス提供法の政令・内閣府令・監督指針案が公表され、パブリックコメントを経て公布・施行されることとなりました。

金融サービス提供法」とは
株式、預貯金、保険など幅広い金融サービスを扱う業者に、元本割れリスクや信用リスクなどの説明義務を課し、違反時には顧客が損害賠償請求できるとした法律で、正式名称は「金融サービスの提供に関する法律」(旧、金融商品の販売等に関する法律、略称は「金融商品販売法」平成12年法律第101号)で、略称は「金融サービス提供法」とも呼ばれる。

「金融サービス提供法」の目的とは、
預金者や投資家の保護を目的に、金融商品販売法(2001年施行)として制定され、デジタル技術の急速な進展にあわせて2020年(令和2)に改正・名称変更され、スマートフォンなどを介して銀行、ローン、証券、保険サービス一括提供できるようにした。改正法は2021年11月1日に施行される。所管官庁は、金融庁と消費者庁。

民法は、金融サービスの損害賠償について、業者説明の有無、被害算定額、違法行為との因果関係などの立証責任はすべて顧客にあるとしており、顧客が泣き寝入りするケースがあった。そこで、2001年の金融商品販売法の施行で、顧客は商品に関する重要事項について販売業者の説明が不十分であったことのみを立証し、業者が反証できなければ、元本割れの該当額(元本欠損額)が補償されることになった。

対象は、預貯金、国債や社債などの債券、株式、投資信託、保険・共済、ファンド商品、金融派生商品(デリバティブ)などで、商品先物(さきもの)取引は対象外。
業者に課された重要説明事項には、元本割れのおそれ価格変動リスク倒産リスク権利行使期間や解約期間の制限などが含まれる。

2020年の改正では、銀行、証券、保険などの業態ごとに別々であった許可・登録制度を一本化し、金融サービスをワンストップで提供できる「金融サービス仲介業」を創設。業者は、1回登録すれば、銀行法、金融商品取引法、保険業法などが規定する多様な金融サービスを提供できるようになった。

金融サービスの提供に関する法律(平成12年5月31日法律第101号)
第10条(勧誘方針の策定等)
金融商品販売業者等は、業として行う金融商品の販売等に係る勧誘をしようとするときは、あらかじめ、当該勧誘に関する方針(以下、この条及び第97条において「勧誘方針」という。)を定めなければならない。ただし、当該金融商品販売業者等が、国、地方公共団体その他勧誘の適正を欠くおそれがないと認められる者として政令で定める者である場合又は特定顧客のみを顧客とする金融商品販売業者等である場合は、この限りでない。

2.勧誘方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1)勧誘の対象となる者の知識、経験、財産の状況及び当該金融商品の販売に係る契約を締結する目的に照らし配慮すべき事項
(2)勧誘の方法及び時間帯に関し勧誘の対象となる者に対し配慮すべき事項
(3)前2号に掲げるもののほか、勧誘の適正の確保に関する事項

3.金融商品販売業者等は、第1項の規定により勧誘方針を定めたときは、政令で定める方法により、速やかに、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。

第14条(勧誘方針の公表の方法)
法第10条第3項に規定する政令で定める方法は、金融商品販売業者等の本店又は主たる事務所(金融商品販売業者等が個人である場合にあっては、住所。第1号において同じ。)において勧誘方針を見やすいように掲示する方法又は勧誘方針を閲覧に供する方法及び次の各号に掲げる場合に該当するときは、当該各号に定める方法とする。
(1)金融商品販売業者等が、その営業所、事務所その他の場所(その本店又は主たる事務所を除く。以下この号において「営業所等」という。)において金融商品の販売等を行う場合 金融商品の販売等を行う営業所等ごとに、勧誘方針を見やすいように掲示する方法又は勧誘方針を閲覧に供する方法
(2)金融商品販売業者等が、公衆によって直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと(以下この号において「自動送信」という。)により金融商品の販売等を行う場合(前号に掲げる場合に該当する場合を除く。) 勧誘方針を自動送信する方法

金融商品の販売等に関する法律施行令等の一部を改正する政令(政令第一六二号)(金融庁)