今年3月に損害保険協会ホームページに「代理店業務品質に関する評価指針」が公表されました。具体的な施策として2026年度より全ての保険代理店に「自己点検チェックの取り組み」が求められることになります。2025年度はトライアルの位置付けで2026年度から本格実施の予定です。以下に概要をまとめましたのでご理解の上、2026年度本格実施に向けて準備を進めてください。
■ 背景と目的
2023年に発覚した保険金不正請求や保険料調整問題など、一連の不祥事を背景に、損害保険業界全体の信頼を回復し、構造的な課題を解消する必要があるとの認識が広まりました。これを受けて、損害保険協会は「代理店業務品質評価制度」を構築し、その一環として「自己点検チェック」の取組みを推進しています。本制度は、保険代理店が自ら業務の適正性を確認し、主体的・継続的に課題を発見・改善することで、顧客本位の業務運営を実現し、損保業界全体の健全性と透明性を高めることを目的としています。
■ 2025年度の位置づけ(トライアル運用)
2025年度は、2026年度からの本格運用に向けた「トライアル期間」として位置づけられています。代理店は制度の目的や点検項目への理解を深め、記述式設問への対応準備を行うことが求められます。特に以下の4項目については、記述式回答が必須となっています。
1. 不適切な便宜供与の禁止
2. 利益相反管理
3. 苦情の対応・管理
4. 個人情報管理
■ 自己点検チェックの特徴と意義
自己点検は、単なるチェックリストではなく、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)の一環として、自店の業務運営の健全性を確認し、改善に結び付ける「自律的・主体的な取組み」です。不備が発見されることは問題ではなく、改善の契機として重要視されます。また、点検結果は損保会社と共有し、相互の「対話」を通じて実効性のある業務改善を図ります。対話は、一方的な指導ではなく、相手の立場や考え方を尊重しながら、深度ある意見交換を行うことが期待されます。
■ 実施手順(概要)
1. 事前準備:代理店の規模・特性に応じて計画を立案。点検主体を決定し、使用する資料などを準備。
2. 点検実施:募集人が「自己点検チェックシート(募集人用)」で点検し、責任者が「代理店用」シートでとりまとめ。
3. 改善・記録保存:不備があれば改善策を講じ、対応内容を記録。点検結果は紙または電子データで保存し、次回以降の参考に活用。
4. 保険会社との対話:点検結果を基に、保険会社と建設的な対話を実施。フィードバックを受けてさらなる改善を目指します。
■ チェックシートの構成と使い方
チェックシートは以下の3部構成です。
• 基礎情報入力シート:代理店情報を記入。乗合代理店はすべての保険会社の状況を踏まえて回答。
• 一覧シート:回答状況や進捗を確認。
• 回答シート:各項目に「はい/いいえ」で回答し、記述式欄には日常業務の取組みや改善内容、確認資料を記入。
記述必須の4項目においては、確認資料名、取組みの詳細、改善内容、完了(予定)時期、保険会社からのフィードバック等も明記が必要です。
■ その他の留意点
• 自己点検は「別個登録代理店」ごとに実施(本店一括は不可)。
• 2026年度以降、自己点検チェックはすべての代理店に義務化予定。
• 代理店が記録をきちんと残し、保険会社と対話することで、業界全体の品質向上につながります。