国税「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)
(保険契約等に関する権利の評価)に対する意見公募手続の実施について

「低解約型の逓増定期保険などの法人から個人への名義変更」が税務上の問題になっており、
4月28日改正案が示され、パブリックコメントの募集が開始されました。

「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)の概要(根拠法令条項 : 所得税法第36条)~令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給より適用予定~

一部新聞報道がなされていた、いわゆる低解約返戻金型保険を使った節税策への対応として、2021年4月28日付け、国税庁は所得税基本通達36-37を見直すパブリックコメントを公表した(意見募集は5月27日まで)。

【参考】 パブリックコメント
「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(保険契約等に関する権利の評価)に対する意見公募手続の実施について

現行では、使用者が役員や従業員に対し保険契約等(生命保険契約若しくは損害保険契約又はこれらに類する共済契約)に関する権利を支給した場合、支給時において保険契約等を解約した場合に支払われることとなる解約返戻金の額で評価する取扱いとされている。

他方、「低解約返戻金型保険」や「復旧することのできる払済保険」など解約返戻金の額が著しく低いと認められる保険契約等については、第三者との通常の取引において低い解約返戻金の額で名義変更等を行うことは想定されないことから、支給時解約返戻金の額で評価することは適当ではないとして、今回の見直しに至った。

改正案では、保険契約等に関する権利について、支払保険料の一部を前払保険料として資産に計上する取扱いが定められている法人税基本通達の取扱いを踏まえ、使用者が、役員や従業員に対して、解約返戻金の額が著しく低いと認められる次の保険契約等に関する権利を支給した場合には、それぞれ次の金額で評価することとしている。

① 支給時解約返戻金の額が支給時資産計上額の70%に相当する金額未満である保険契約等に関する権利(法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、支給時資産計上額により評価する。

② 復旧することのできる払済保険その他これに類する保険契約等に関する権利(元の契約が法人税基本通達9-3-5の2の取扱いの適用を受けるものに限る。)を支給した場合には、支給時資産計上額に法人税基本通達9-3-7の2の取扱いにより使用者が損金に算入した金額を加算した金額により評価する。

(注) 「支給時資産計上額」とは、使用者が支払った保険料の額のうちその保険契約等に関する権利の支給時の直前において前払保険料として法人税基本通達の取扱いにより資産に計上すべき金額をいい、預け金などで処理した前納保険料の金額、未収の剰余金の分配額等がある場合には、これらの金額を加算した金額をいう。

今回の見直しの対象は、法人税基本通達9-3-5の2の適用を受ける保険契約等に関する権利としているが、法人税基本通達の他の取扱いにより保険料の一部を前払保険料に計上する「解約返戻率の低い定期保険等」及び「養老保険」などについては、保険商品の設計などを調査したうえで、見直しの要否を検討するとしている。

改正後の所得税基本通達の取扱いは、令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給について適用することが予定されている。

なお、法人税基本通達9-3-5の2は令和元年の改正通達によって新設されたものだが(詳しくは[こちら]を参照)、その取扱いは令和元年7月8日以後に締結する保険契約等について適用するとされていることから、同日前に締結した保険契約等は、原則として見直しの対象にならないとの見解を示している。

〈所得税基本通達36-37を見直すパブリックコメント〉

〈所得税基本通達36-37の新旧対照表〉