《12月1日からアルコール検知器利用の義務化が正式決定へ(2023年9月時点)》

2022年4月の道路交通法の改正に伴い、白ナンバーの社用車を使用する事業者にもアルコールチェックが義務化されました。
7月8日までの間にパブリックコメント(意見公募)を募集していましたが、8月8日には警視庁から正式にアルコール検知器による飲酒検査を12月1日から義務化することが発表されました。
社用車を使用する事業者(含む、保険代理店)は、具体的な対応が求められます。
(※)アルコール検知器使用義務化規定の適用について(警視庁・広報資料)

アルコールチェック義務化に伴い、保険代理店も以下5つの措置を行う必要があります。

1.体制の構築
法律では、運転前後でアルコールチェックを実施するよう定められていますが、実際の運用にあたっては社内でルール化し、管理体制を構築する必要があります。

2.運転管理者の選任
乗車定員が11人以上の自動車が1台、またはその他の自動車が5台以上を使用している場合は、事業所ごとに安全運転管理者を1名選任する義務があります。
安全運転管理者とは、運転者の酒気帯び確認や運行計画の作成、安全運転の指導など事業所の安全運転を確保する責任者です。
原則20歳以上で、運転管理経歴が2年以上ある従業員から選任することが条件です。(副安全運転管理者が置かれる事業所では30歳以上)
また選任者が決まったあとは、所定の用紙を各都道府県警察へ届け出なければいけません。
もし安全運転管理者の選任基準を満たしているのにもかかわらず、選任していなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます。
その他、安全運転管理者の解任命令に違反した場合や、安全運転確保のための是正措置命令に従わない場合も50万円以下の罰金となります。
加えて、車を20台以上保有している事業所では副安全運転管理者の選任も必要です。
副安全運転管理者も同様に、選任をしていなかった場合は50万円以下の罰金が科されます。
企業としての対応をないがしろにすると、事故リスクが高まるのはもちろんのこと、従業員が飲酒運転をした場合は道路交通法違反として従業員だけでなく会社に重い罰則が科されます。
そのため、自社が業務で使用する自動車台数を確認し、条件を満たした従業員の中から安全運転管理者を選任しましょう。

3.チェックの記録と保管
2022年4月の改正により、アルコールチェックを行った際にはその結果を記録し、1年間保管することが義務付けられました。
具体的には、以下の内容の記録が求められます。
● 確認者名(安全運転管理者)
● 運転者名
● 自動車のナンバー
● 確認の日時
● 確認の方法
・アルコール検知器の使用の有無
・対面でない場合は具体的方法
● 酒気帯びの有無
● 指示事項
● その他必要な事項

なお、記録簿については指定の様式や媒体はありません。
自社でフォーマットを作成することも認められ、保管方法も紙とデータどちらでも可能です。
出典:警察庁「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行に伴う安全運転管理者業務の拡充について(通達)」

紙の記録簿のデメリットとは、アルコールチェックの記録簿を紙で記録・保管することを検討している企業も少なくないでしょう。しかし、紙の管理は紛失や改ざんのリスクもあります。
もし、公安委員会から記録簿の提出を求められた際に、紛失や改ざんの事実が判明した場合は、安全運転管理者の解任や一定期間の車両使用停止などの行政処分を受ける可能性があるので注意しましょう。
徹底した管理を行うのであれば、アルコールチェックのアプリなどを活用し、記録簿を電子化して管理することをおすすめします。

4.就業規則等の見直し
アルコールチェックの実施に伴い、就業規則や社内規定の見直しも必要になります。
たとえば、構築した管理体制について「いつ・誰が・誰に対して・どのよう」に実施するのかを車両管理規定などの社内規定に明記するなどが挙げられます。
また、従業員が飲酒運転やアルコールチェックを拒否した場合に備え、就業規則の服務規律や懲戒規定なども整備しておくことで、アルコールチェックの実施を担保できます。

運転前後の酒気帯びの確認が義務化されたことに併せて、以下の関連する社内規程類の見直しや整備が必要です。
・就業規則(服務規定、遵守事項、懲戒規定)
・社有車管理規程(社有車使用規程など名称に関係なく)
・出張規程(自動車での出張を想定している場合)
・マイカー業務使用規程
・マイカー通勤規程(通勤自体は今回の義務化対象ではありません)
・その他、業務上において自動車の使用を考慮している規程

5.社内への教育
アルコールチェックは法律で定められた、強制力の高いものです。
安全運転管理者だけではなく、車を運転する全従業員が飲酒運転の危険性やアルコールチェックの重要性などを理解しなくてはいけません。
コンプライアンス違反防止のためにも、社内研修のほか、外部セミナーも活用しながら社内教育を徹底して行いましょう。

なお、アルコールチェックの形骸化抑止のため、警察庁から是正措置命令の基準が通達されています。
例えば、必要なアルコール検知器を確保せず、適正な飲酒検査が行われないことによって、ドライバーが酒気帯び運転を行った場合等も是正措置命令の対象となります。
※参考サイト:警察庁丁交企発第202号(2023.8.15/警察庁交通局交通企画課)

つきましては、2023年12月からアルコール検知器を使用した飲酒検査の義務化が正式決定されましたので、アルコール検知器の入手など、早めにご検討のうえ、自動車安全運行の体制を整備されることをおすすめします。

《保険代理店の自動車安全運行の体制整備》
〇道交法上の車両の運行にあたる場合は、基本的に飲酒酒気帯びは禁止であり、各人のアルコール検知器によるチェックは必須となります。
〇自動車の使用の本拠(本店、支店等)ごとに自動車が5台以上ある場合は、安全運転管理者等を選任する必要があります。
〇運行目的が業務に起因する場合はアルコールチェックが義務化され、記録を1年間保管が求められます。
〇安全運転管理者等によるアルコールチェック体制を整備し、その仕組みを点検・監査することとなります。

▼下記の内容を参考に自社のアルコールチェック体制を早めに整備ください。
→社内周知のためには、就業規則にアルコールチェックに関する条項の追加による改定を説明し、マニュアルや資料を使った研修およびチラシの社内掲示など注意喚起を行ってください。
(1)現行の就業規則へアルコールチェックに関する条項の追加
(2)飲酒運転防止マニュアル(損保協会)
(3)アルコール検知器使用義務化規定の適用について(警視庁・広報資料)
(4)アルコールチェック義務化チラシ(警視庁交通部資料)
(5)アルコールチェック記録シート(NSひな形)

【注意ポイント】
Q1:レンタカーやリース車両を業務で使用する際も、アルコールチェックは必要ですか?
A1:レンタカーやリース車両等、自社で所有していない車両を業務で使用する場合も、運転前後のアルコールチェックは必要です。

Q2:規定台数(自動車の使用の本拠(本店、支店等)ごとに自動車が5台以上」に達している場合、安全運転管理者等を選任しないと処罰されますか?
A2:安全運転管理者、副安全運転管理者の選任については、道路交通法第74条の3第 1項、第4項に、「自動車の使用者等は、規定の台数以上の自動車の使用の本拠ごとに、安全運転管理者等を選任しなければならない。」と定められ、選任しなかった場合は、50万円以下の罰金となります。また、規定の台数以下の場合であっても、安全運転管理者を選任することは可能です。選任する場合は、選任届の提出と年度内に1回の法定講習の受講が必要です。

Q3:道路交通法施行規則の「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者」とは、どういう意味ですか?
A3:「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者」における「運転」とは、運転を含む業務の開始前と終了後に行えばいいということです。

Q4:「当該運転者の状態を目視等で確認」とありますが、具体的にどうやって確認すればいいですか?
A4:「目視等で確認」とは、原則として対面で、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子などを確認することです。ただし、対面での確認が困難な場合は、運転者にアルコール検知器による測定結果を報告・記録させる方法を用いればよいとされています。

Q5:「記録を一年間保存」とありますが、保存の形式は決められていますか?
A5:確認結果の記録は1年間保存すると規定されていますが、法律で定められた書類様式はありません。また、専用のパソコンファイルやクラウドでの管理が必要といった規定もありません。記録が義務付けられている項目を網羅できるよう各事業所の業務運営の実態に応じて最適な方法を選択ください。

Q6:アルコールチェック結果の記録は、警察や役所等に提出する必要はありますか?
A6:確認結果の記録について、提出の義務は定められていません。ただし、道路交通法第75条の2の2で、公安委員会が必要だと認める場合は、自動車の使用者や安全運転管理者に対して必要な資料の提出を求めることができると規定されています。そのため、万が一、業務運転中に事故が起こった場合等は、警察から記録の提出を求められる可能性があります。